ANGLES

「Is This It?」という漠然とした問いで幕を開け、思わぬ所から「This Is It」というスーパースターの断末魔で終わりを迎えた2000年代最初の10年間。その自由で型破りなモダン・エイジの空気を決定付けたのは誰がどう見てもTHE STROKESだった。だからこそ、新たなディケイドへと突入したいま、彼らの4枚目のアルバム『ANGLES』には相当な期待と(否定的ではなく)批判的な視線が注がれている。
これまでにないほどカラフルなジャケットが象徴するように、本作はレンジの広い楽曲を備えている。これはジュリアンを頭脳とする彼ら流の方法論を徹底的に排除した結果だという。5人のメンバーが平等にアイデアを出し合い、実に民主的な創作活動だったそう。なるほど、レゲエを下敷きにしたような冒頭曲や、持ち前の性急なビートにフォーカスした4曲目、POLICEのように巧いアレンジを効かせた3曲目や6曲目などバラエティに富んだ新境地、一方でタイトなリズムにツイン・ギターが踊るリード・シングルの2曲目など元来のファンを心配させない心配りもある。相変わらずギターのフレーズは練られていておもしろいし、10曲でトータル35分にサラリとまとめるセンスも健在。しかしながら、(少なくとも私の)期待を超える内容ではなかった。片付けたと言いながらもダンボールに物を詰め込んだだけのような、中途半端で先送りな自己満足がこびりついていて、なんとも後味が悪い。
自分たちは、もがき苦しんでいる。バンド内のそんな近況報告をされたような気分だ。名盤と評され多くの模倣者を生んだ1st、そして曲構成の巧さ見事に証明した小品が揃った2ndの存在をいっそう輝かせてしまうオチと言えよう。本作を聴いて、「THE STROKESが新しいモードに入ったぁ〜やったー。」などとレビューする連中がいるとするなら、そいつは相当な楽天家か、でなければ本当は耳が聞こえていないのではないかしらと思う。ファンとしては相当辛い作品なのだ。繰り返しになるが、おもしろい部分はいくつも発見できる。その点のみを注視して、彼らのチャレンジ精神を称えることもできる。ただ、グッとくる部分があまりにも少ない。平凡なバンドがこうした散漫な作品をリリースしてしまうと、間違いなく次はない。私達ファンにとって幸いなのは、彼らが、(自分たちが出したいと思う限り)次を出せるポジションにあるバンドだということだけである。次回作に期待。

アングルズ

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