くものいろ

入道雲がモクモクと集まり、ぬるい風が肌を湿らせる。その雲の腹がどんより重く、かつ黒くなると、そらきた。夕立。焼けたアスファルトに落ちた雨が放つ臭い、あがった空を見上げてみれば、晴天。雲は、白々しく漂う。“くもの色”と名乗るバンドのデビュー作は、女声の柔らかさからか、豪雨の荒々しさを思わせる音ではないけれど、様々な雲の表情を思い出させてくれる良作だった。珍味、が好まれる昨今のインディ事情に照らせば割と平凡だなぁと感じる瞬間さえあるのは事実。それでも、軽やかで的確な電子音が踊る箱庭系ポップ・ソングあり、ルー・リード卿の絶品カバーあり、音響系に接近しようとしたチル・ナンバーありで、なかなか楽しめる。なにより、相手の袖口をそっと掴んで放さない可愛らしさがある。ちょうど、あそこの雑貨屋さんやこっちの本屋さんに似合いそうな可愛らしさだ。これはあんまり人に知らせないで、こっそり1人で楽しんでやろう。

Satellite of Love / サテライト・オブ・ラブ

Satellite of Love / サテライト・オブ・ラブ