Mood of 2010-Song Section-

【Mood of 2010-Song Section-】

song / artist - album
1.Can't Hear My Eyes / ARIEL PINK'S HAUNTED GRAFFITI - Before Today
2.The Suburbs / ARCADE FIRE - The Suburbs
3.Audience / COLD WAR KIDS - Behave Yourself EP
4.Boy Friend / BEST COAST - Crazy For You
5.Flash Delirium / MGMT - Congratulations
6.Come With Me / CEO - White Magic
7.Bloodbuzz Ohio / THE NATIONAL - High Violet
8.Let Go / JJ - JJ N°3
9.Deli / DELOREAN - Ayrton Senna
10.Desire Lines / DEERHUNTER - Halcyon Digest
(ボーナストラック)
11.Hoot / 少女時代 - 3rd Mini Album Hoot

さて、そろそろこういう時期。今年はちょっと趣向を凝らしてみよう。先ずは10曲選んでこの1年をレジュメしてみる。曲ベースで2010年を振り返るとこんな感じ。アルバム・ベースでみたら…とかはまたこんど。①はここ最近の趣味に引きずられた感が…。それでもこの懐かしさは捨てがたい。②はもうここでも散々書きましたね。③、これかなり意外。今年はEP1枚しか出してないコールド・ウォー・キッズが堂々の3位。そして夏の思い出④。⑤⑦⑩はそれぞれの底力が発揮された良作。で、⑥⑧⑨の欧州グローファイ勢。この辺りはもっと掘れば色々でてきそうで今後も要警戒。⑨だけは音源自体2009年からあったけど、CD化されたのが今年なもんで許して。やっぱりUSインディが強いね。トップ5まではUS勢―アーケード・ファイアはカナダだけどUSみたいなもんでしょ。ボートラの⑪は言わずと知れたK-ポップ。いまや飛ぶ鳥を落とす勢い。でもこの曲、ブラーのアレックス君(ベースのイケメン)が書いたってよ。なんだかバンド休止中にチーズ作りでひとやま当てたって聞いてたけど、しっかり仕事してたんすね。

中華街

Kaputt

Kaputt

2011年はソフト・ロック再熱の兆しあり。いま思うと、アリエル・ピンクの“ラウンド・アンド・ラウンド”が垂れ流していた懐かしさはその前兆だったのか。そんな流れのなかでちょっと注目していただきたいのがコチラ。群雄割拠のカナダ・インディ・シーンにおいて七福神的大所帯バンド、ニュー・ポルノグラファーズのダン・ベイハーによる変名ユニット、デストロイヤーの最新作です。なんせ、すでに公開されているリード曲“チャイナタウン”がすこぶる良い。てかこれしか聴けてない状況で猛プッシュする無責任さに、我ながら閉口してしまいますがそれでも、突き刺さる人多いと思います。しっとりとした打ち込みにわびさびの効いた美メロ。そして色気ムンムンのサックス。曲中に漂うノスタルジックなムードが導くのは、周回遅れでやってきた近未来。グローファイやらなんやらチルな音楽を一通り経験した耳であればなおのこと、うっとりまどろんでしまうことでしょう。

なんつったってビートルズ

たまにはマジメな話。こないだ友人のブログでTHE BEATLES音源のiTunes解禁に関する日記があったのだが、その解禁された音源、やっぱり結構売れてるらしい。まさか今回の解禁をきっかけに、iPodやらiPhoneやらを購入してデジタルミュージック・ライフをスタートさせたおじ様はおらんだろうが、「いや、いるんじゃねぇの!?」っと議論できてしまいそうなTHE BEATLESの影響力ってやっぱ凄い。そして、この件で最も得をするのは、ポール・マッカートニーでもなくヨーコ・オノでもなく、ジョージの遺族やリンゴでもない。ましてやリスナーでもない。iTunesだ。
悲願だったのだろう。「洋楽」という日本人にだけ通用するジャンル分けで語るならば、そのAtoZは間違いなく「B」から始まるのだ。極限まで在庫を削減したCDショップのカタログ・コーナーならばきっと、「B」からスタートするだろう。逆に言うと、まともな品揃えをめざすなら、THE BEATLESは絶対に外せないし、つまりこれまでのiTunes Storeは「まともな店」ではなかったということになる。THE BEATLESによって店のランクは決まるのだ。
そしてこの解禁劇を境に、より多くのアーティストが自身の楽曲のiTunes解禁を始めるだろう。それは、THE BEATLESがある「まともな店」なら置いてもいいといったごく単純な理由で。現状、大物アーティストの楽曲全てがiTunesに解禁されているわけではない。AC/DCTHE SMITHSもここでは買えないのだ。これについてはアーティスト各自が様々なコメントをしているが、そのほとんどは価格の妥当性や曲単位での販売方法に関するもので、彼らがこれまでに売ってきた廉価盤やベスト盤の前ではちょっと弱い論拠になる。まぁ本人がiTunesで売りたくないって言うんなら好きにすればいいんだけども。で、こうした一見カッコイイ論拠ってのは、ロック界に限って言えば、THE BEATLESに弱かったりもする。「ビートルズと同じリストに自分が並べるなんて最高だぜ」っとか言っちゃって、ね。そうしてiTunes加盟アーティストが増殖するってわけ。iTunesの価値がますます上がるってわけ。別にTHE BEATLESがダウンロードされなくたって、そこにあるだけで充分すぎる役割を担ってくれるってわけ。
こうなるとね、マジでキツいわけですよ。同業者は。こっちはリスクを承知で在庫抱えてんのに向こうはハード・ディスクですからね。って、なんだかただのぼやきになってきたので、またこんど。

熊手

前回(蝶々)、前々回(鹿)と続いて次は猪でイノ・シカ・チョウ完成だろうと予想していた人は、サマー・ウォーズの見すぎです。残念、今回は熊でござる。今年は日本列島いたるところの山村で熊が悪さをはたらいているようですが、そんな熊事情はUSインディ畑にもあてはまるようで、これがその証拠映像。

さて、この抱腹絶倒映像にいったい何頭の熊が出没したでしょう?ってのはいいとして、MGMTの連中とは高校時代のクラスメートというBEAR HANDSのデビュー・アルバムが熱いです。ブルックリン臭がプンプンするインディ・サイケあり、ディスコ・パンクっぽい楽曲もあり、軽いノリのローファイ・ポップあり、なかなか楽しめる一品。エレクトロニカに頼らず、あくまでバンド・サウンドでまとめあげている点やダラダラ長い曲がないのもいいところ。ジャケットだけはもう少し何とかならなかったのかと思うけれど、そこまでクリアされると優等生すぎるので、これはご愛嬌。いまは輸入盤しかないけれど、しっかりしたプロモーションさえつけば、それこそMGMTやTHE DRUMSみたいに日本でもウケると思う。それにしてもこのビデオ……もっかい見よ。

Burning Bush Supper Club

Burning Bush Supper Club

蝶々夫人

10年前、高校一年生だった自分に「ピンカートンのデラックスエディションがでるよ。しかも未発表曲満載で」っと伝えることができたら、それから10年も待たなければならない高校生の自分はどんな顔をするだろう?「余計なこと言いやがって」っと舌打ちするかもしれないし、“You Gave Your Love To Me Softly”や“I Just Threw Out The Love Of My Dreams”は収録されるのかどうかしつこく尋ねるかも。WEEZERの2ndアルバムである『Pinkerton』は当時から私にとって聖典だったのだ。点取り虫か童貞のハードロック狂みたいなのしかいなかったクラスに馴染めず、完全に浮きまくっていた私にとって、安藤広重の浮世絵『蒲原』をジャケットにあしらった本作は、全ての意味で完璧だった。
いつもみたいに長々と講釈したくはないけれど、簡単にレジュメしてみよう。このアルバムは、一瞬にしてUSギター・ロックの頂点に立ってしまったリヴァース・クオモというメガネ男子がその成功に戸惑い、ときに乱痴気騒ぎを起こし、嘘つきの彼女に追いすがり、日本からのファンレターが入っていた便箋を舐め、レズの娘に恋したり、遂に理想の女性に巡りあったりして青春を卒業する物語。赤裸々すぎる歌詞と過剰なディストーション、半泣きのボーカルとウルトラ・ポップなメロディだけで構成された青春独白日記。そこに愛はない。
「そこに愛はない」そのとおりだ。その事実を自覚しているという一点こそ、本作の魅力。着うた世代の歌姫や総選挙に出馬するようなアイドル達が軽薄に歌う「I Love You」とは訳がちがう。愛なんてポップ・ソングの中に見つかるわけがない。だからBEATLESは「All Need Is Love」と叫び、STROKESは「Is This It?」と問いかけたわけだ。この文脈でいくと、「This Is It」と言い切ってしまったMICHAEL JACKSONはホントにツワモノということになるが、それは置いといて。
そんなことはないと思うが、もしも君がWEEZERを、『PINKERTON』を聴いたことがないのなら、一度試して頂きたい。買え、とは言わない。レンタルでも違法ダウンロードでも何でも構わない。どうせ結局、手に入れたくなるんだから。

ピンカートン<デラックス・エディション>

ピンカートン<デラックス・エディション>

鹿狩り

2010年も暮れに向かいつつあるこの時期に、新商品のCMにレディー・ガガを起用してしまうところが、auという会社のマーケティング戦略が持つ、垢抜けないダサさを物語っていると思う。何故iPodiPhoneのCM曲がヒットしたのかを全く理解していない。そして、カッコよさが既に定着してしまっている相手に対抗するのに、こっちもカッコよさを持ってくるっていう…それって、戦略的っていえるんでしょうか。別にiPhoneレディー・ガガも存在そのものはカッコイイとは思わないけれど、両者とも想定している価値観ってそういう類のものでしょ!?ストライプのスーツにトンがった革靴で闊歩するインテリ風ビジネスマンがいかにも好みそうなカッコよさみたいな。そういうスノッブな価値観に吐き気を覚えるような層をいかに取り込むかを考えた方が良かったんじゃないかな?ディアハンターを聴く「LISMO!ユーザー」を作るにはどうすればいいかとか、ね。
ま、ガガ様やスマートフォンはどうでもいいけどディアハンター、色んな意味であんまり売れないのかなと。なぜなら、1)地味である、2)加えてアルバム中盤以降にいい曲が集中しているので魅力が伝わる前に聴くのをやめられてしまう可能性が高い、3)そもそもこの手の作品を好んで聴く層は音楽にお金を払う習慣のない人が多い、4)本作の魅力に心酔した人はその魅力についてあまり語りたがらなくなる。まぁ3番目の理由なんてここで紹介してるインディ・ロック全部にあてはまるのだが、それはいいとしてもっとも奇妙なのが4番目の理由でしょうね。
「本作の魅力に心酔した人はその魅力についてあまり語りたがらなくなる。」そのこころは!?それはこのアルバムがリスナーと築こうとしている関係に由来します。歌詞は暗いしボーカルはお世辞にも美声とは言えない。アニコレのカラフルさを丸ごと飲み込んでしまいそうな闇のムードが楽曲全体に蔓延していて、重い…。けれどメロディだけは掛け値なしに美しい。つまりツンデレなんですね。徹底的にリスナーを痛めつけ昏睡状態に陥ったところで、えもいわれる美メロがふっと顔を出す。そしてその菩薩のごとき表情に気を許していると、短剣でわき腹をズブリとやられる、みたいな。ショックと救済が変わりばんこにやってくるんですねぇ〜。つまり演るほうも聴くほうも変態なんですねぇ〜。こんなの好き好んで聴いてますって、誰がカミングアウトできますか!?あえて、日頃音楽をあまり聴かないような人になら言えるかもしれませんよ。「ディアハンターってバンドがいぃんだ〜」みたいな感じで。だってわかりっこないもの。けれど、ちょっとでもインディ・ロックやディアハンター周辺なんかに予備知識がある相手にはなかなか…。「お前もかよ!!」って思われちゃうもんね。
いってみれば太宰文学みたいなもので、作品と読み手(聴き手)の間でやり取りさせる感情がパーソナルすぎるもんだから、もうひとり誰か連れてきてその魅力を一緒に分かちあおうって気になれない。作品対自分の関係性に没頭したくなる。こういう作品ばかりと接していると、ほんとにあっちの世界に行ってしまって帰ってくれなくなるんじゃないかと心配されたりするけれど、最後にはなぜだかスッキリした自分がいることに気付く。そりゃバズは広がらんよね。来年に予定されている来日公演でも会場の全員が体育座りで静かに観賞しちゃってる様子が無理なく想像できてしまいますもの(実際はそんなことないと思うが)。そして私は、そんなディアハンターと彼らの最新作『Halcyon Digest』が大好きだ。

Halcyon Digest [輸入盤CD] (CAD3X38CD)

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ヤヴァイ。惚れた!!

WARPAINT。LA在住の女子4人組。問題なければ来週にはデビュー作の輸入盤が店頭に並ぶと思う。音専誌の選ぶ期待の新人ランキングっぽいのにあがってたりしたので、今年の前半くらいからちらほら露出はあったのだけれど、そのまま放置。元レッチリジョン・フルシアンテの寵愛を受けたりと業界人ウケがすこぶるいぃ感じのニュースが洩れ伝わってきた夏の始め頃、やっぱりスルー。その後<ラフ・トレード>からアルバム出るよ、って聞いてからやっとアルバム全曲ストリーミングできるのを知って、瞬殺。やっぱUSインディにとって2010年は、NYからLAへと権限委譲の年だったんだと実感。
THE XXがソーシャル・ネットワーク時代の隙間風だったとすれば、その微風は彼女たちの部屋にも吹き込んでいたのだろう。リスナーとの距離をグッと近づけてしまうエコーのかかったボーカルや輪郭のくっきりとしたベースの鳴り。そこにフルシアンテの手垢がべっとりこびりついたギターが薄膜を張る。空間系エフェクト&アルペジオ主体のギターワークが微妙にヴィジュアル系っぽい臭気を放っていて、ちょいとドローンすぎるのではないかと思った矢先、タイミングを読んだように志の高そうなドラムの刻みが気を利かせ、本作のポップな仕上がりを決定付けている。
シューゲイズもしくはレトロなサイケデリアが必須要綱とされている現インディにおいてそのどちらとも微妙に距離を置き、またときには逆に密接にそれらとリンクする聡明さが本作の魅力。まるで、めんと向かって話していた相手が急に背後から囁いてきたときのように、ハッとさせられるタイミングが何度か訪れる。信じられない。プレイヤーのストップボタンを押すのにこれほどためらったのは、SPOONの『GA GA GA GA GA』を初体験したとき以来かも。いや、そんなことはいい。とにかくヤヴァイ。このアルバムになにも感じないのならば、不感症のカウンセリングを受けることをおすすめしよう。
アルバム・ストリーミング
http://stereogum.com/547771/listen-to-warpaint-the-fool/news/

The Fool [輸入盤CD] (RTRADCD580)

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